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個人(正社員)が実際どの程度自己啓発をおこなったかについても『能力開発基本調査』が調べている。
二〇〇〇年度に「自己啓発」をおこなった者は三七・三%である。
Off-JTを受講した老のほうが自己啓発をおこなった者の割合が高く、五四・九%となっている。
自己啓発をおこなった者について、その目的をみると(複数回答)、「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」をあげた者が最も高く七九・五%、ついで「将来の仕事やキャリア・アップに備えて」三八・八%、「資格取得のため」三四・一%となっている。
多くの人は現在の仕事上の必要にもとづいて自己啓発しているわけである。
つまり、自己啓発であっても、現在している業務そのものが職業能力開発の基盤となっていることが重要である。
自己啓発の方法は(複数回答)、「ラジオ・テレビ、専門書・パソコン通信等による自学・自習」をあげた者の割合が最も高く、四一・〇%となっている。
ついで、「民間教育訓練機関の講習会・セナーへの参加」二四・一%、「社外の勉強会・研究会への参加」二一・四%、「社内の自主的な勉強会・研究会への参加」一八・五%、「通信教育の受講」一五二二%の順となっている。
なお、自己啓発をおこなった者について二〇〇〇年度に自己啓発にかかった自己負担額の合計額をみると、「〇円」が最も多く三二・六%、自己負担額が(〇円ではなく)三万円以下であった者が三六・一%、三万円を超える自己負担があった者は二七・四%となっている。
自己負担額が「〇円」であった者を除き、実際に自己負担があった者の負担額は、平均で七万九五四一円であり、費用の補助を受けた者は三六・四%に達している。
どこから費用補助を受けたかをみると(複数回答)、「会社」から補助を受けた者が八七二ハ%、「国の教育訓練給付金制度」が一五・四%であった。
個人のキャリア志向以上のような能力開発の現状を踏まえたうえで、今後の能力開発、あるいはキャリア形成を個人ほどのように考えているのであろうか。
繰り返すが、能力開発の基盤は日常業務であり、勤務している企業での現在の仕事である。
ただ、企業自体が自社内で従業員の定年までの雇用継続の負担に耐えられなくなっていることを、最も知っているのも従業員たちである。
注:「職業能力の必要性」:より高い職業能力を身につける必要がある「社会的通用性」:同じ仕事であれば,勤務先を変えても通用する職業能力をもっている「職業能力の自信」:現在の職業能力には自信がある自己の職業的生涯を一つの会社でまっとうできる蓋然性が弱まるとともに、彼らの専門的キャリア志向は高まりつつあるようにみえる。
日経連のいう、他社でも自社でも通用するエソブロイヤビリティを身につけようと、労働者も思い始めているのである。
その結果、自分のキャリアが企業の命ずる異動によって全面的に左右されることへの不安が強まっているように思える。
企業が定年まで安定的に存続する保証がない以上、自分のキャリアを企業に全面的にゆだねることは危険である。
企業から部分的に独立したキャリアへの志向が現れつつあるのではないだろうか。
自分のキャリア形成について、個人ほどのような認識をもっているのであろうか。
日本労働研究機構『勤労生活に関する調査』(二〇〇一年)から、この点をみておこう。
まず、自己能力については、「より高い職業能力を身につける必要がある」と感じている人が六〇・二%、「同じ仕事であれば、勤務先を変えても通用する職業能力をもっている」人も六〇・二%、自分の職業能力に自信があるのは五六・七%である(図表6-4)。
高い能力評価とともに、職業能力の獲得意欲も高く、積極的な自己能力評価がされている。
男女とも「職業能力の必要性」は若年層で高く、年齢とともに低下している。
男性の「社会的通用性」が三〇代で急に増加するのに対し、女性では二〇代から五〇代まではぼ横ばいになっている。
次に、図表615をみていただきたい。
能力開発には「多様な仕事経験を積んだ方がよい」と多くの人はみている。
多くの人は、まさかこの問いをキャリア上無関係の仕事をすることとはとらないだろう。
それでは不熟練工だ。
それぞれの仕事が関連することを前提とすれば、多様な職業経験は職業能力の幅を拡大し、相乗効果によるキャリアアップがイメージされているだろう。
「一つの会社で働き続けるよりも、複数の会社を経験した方がよい」については賛否が分かれる。
複数の会社を経験したほうが職業能力が高まると考える人もいるが、一つの企業にとどまったほうが効果的だと考える人も多い。
また、外部の教育機関への評価は高くない。
これはOJTの重要性が認識されていることを示しているように思える。
学校などでは獲得できない職業能力がたくさんあるのである。
納得のできる結果である。
こうした個人認識を前提としたうえで、現在起こっているのは何か。
第4章で論じたよう「複数会社経験」:職業能力を高めるためには,一つの会社で働き続けるよりも,複数の会社を経験した方がよい「外部の教育機関」:職業能力を高めるためには,職場の訓練よりも,専門学校や大学などの教育機関の方がよいに、長期安定雇用は崩れ去っているわけではない。
雇用の流動化も起こっていない。
しかし、長期不況は、個人の誤解、つまり企業はつぶれない、整理解雇(会社都合離職)をしないという誤解を解きつつある。
そのため、個人は何も考えずに会社に寄りかかることができないと思い始めており、自分のキャリアを企業から少し離れて見始めている。
また、第5章で論じた成果主義化の動きは、賃金や昇進への年齢や勤続年数の影響の大幅な後退を意味し、人事考課が賃金・処遇のほとんどを決定するため、個人の人事考課への関心は強まらざるをえない。
そして、これほ成果の基礎としての自己の職業能力への関心を強めることにもなっているのである。
「その他」「無回答」は省略した。(A)役職・ポスト不足による管理職相当の能力保有者の処遇を図るため)役職にむかない中高年齢者の処遇を図るため(C)生産・販売等の各分野の個々の労働者をスペシャリスト化して,その能力の有効発揮を図るため(D)高度な企画九研究開発力を有する専門家の確保を図るため(E)管理職と専門職の機能分化による組織の効率化を図るため高度経済成長が終わった一九七〇年代後半から、繰り返し必要性が指摘されてきたものに専門職制度がある。
本来管理職は少数しか必要ないから、多くの従業員が管理職になることはできない。
したがって、すぐれた専門的能力をもつ人を専門職として処遇し、管理職と対等に扱うというシステムである。
これは、多くの企業において専門分野で能力を発揮できる人のための昇進コースとして導入されてきた。
しかし、それが本来の専門職制度として確立するケースは少なく、職能資格制度のもとで管理職になれない人たちの受け皿として使われてきた。
このため、従業員も専門職として専門的キャリアを形成することは不利であると理解してきたのである。
二〇〇二年の時点で、専門職制度は、全企業の一九・五%、五〇〇〇人以上規模では五〇・七%で実施されている(図表6-6)。
専門職制度の設定理由は、「生産・販売等の各分野の個々の労働者をスペシャリスト化して、その能力の有効発揮を図るため」とする企業が四四・四%と最も多い。
表向きポスト不足や中高年の処遇などの理由は、全体の三分の一を占めるにすぎない。
優秀な専門職を管理職と同等かそれ以上に処遇しょうとするのは、設定理由のうちの「高度な企画力、研究開発力を有する専門家の確保を図るため」であろう。
しかし、先ほど述べたように、これでは優秀な専門職でもなく、管理職でもない人を処遇できないのである。

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